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No Triathlon No Life...|Back Number

No Triathlon No Life...|白戸太朗の裏ワザ的トライアスロンライフ

Vol.04「嫉妬するほど、うらやましい「自分スタイル」」

自分の頭で考え、自分の足で歩き、自分の手で作ることの必要は、今も、どんな進歩した未来でも同じことだ。ぼくの考え、ぼくの思いは、いつまでもぼくのものでありたい』 これはある小学生が書いた作文。自身で考えること、自身の手で触れること、自分の気持ちを大切にすることなど、「人まねすること」にこそ安心する日本社会に対する強烈な皮肉であり挑戦である。10年ちょっとしか生きていないのに、ここまで書けるとはなかなか憎い奴!? ところで、私の4月はXTERRA(エクステラ※)サイパン大会、タガマントライアスロンと連戦するために、2週間ほど現地に滞在することとなった。近いので一度帰国するのも考えたが、なかなか時間のとれなくなった日常生活を切り離し、リフレッシュするためにもと思い切って残ることに。ほかにもオリビエ・マルソーやジェイミー・ウイットモアなど、XTERRAに出場したプロアスリートが滞在し、地元のアスリートと共に過ごすこととなった。各自、地元アスリートの家にホームステイし、練習会や生活に顔を出しり、持ち回りでクリニックを担当したり。私も担当することになったのだが、英語で座学を教えるのは初体験で冷や汗たらたら。でも、度胸と居直りでなんとか無事終了。ほんといい経験をさせてもらいました!?

ともあれ、彼らとともに生活させてもらって感じるのは、サイパンでスポーツできるのを楽しんでいるなということ。仕事の合間に、海でのランチタイムスイムや、夜中のMTBライド、週末のバーベキュー&カヤック遊びなど、なにも無理することなく気持ちよく遊んでいる。もちろん忙しければ、躊躇なく練習はお休み。特に気合の入ったアスリートたちではないのだけれど、レース出たりトレーニングを楽しんだりしている。彼らに悲壮感などミジンも感じられないし、あまりの能天気さに嫉妬を感じるくらい。我々、日本人アスリートが「少しでも速くなるためにはどうしたらいいか?」と、身を削るような努力をしているのとはどうも結びつかない。 太めのおばさんも笑って30kmの山岳マラソンへ

もちろん環境は違う。夕方には必ず仕事が終わるなんてことは日本ではありえないし、車で15分の通勤なんていうのもまれだろう。でも、それだけではない。人の価値観に引っ張られない自分なりの楽しみ方・快適さを知っていると思うのだ。 日本人は他人の目を気にする恥の文化である。「他人にどう思われる」とか、「人様の迷惑になる」など自分の感覚より、他人から見たときのことを重視しがち。「泳げないのにプール行ったら恥ずかしい」とか、「遅いから、下手だから、カッコ悪いからレースに出ない」とか……。社会では非常に大切な心配りかもしれないが、とかく趣味の分野では余計な心配であることが多い。 たとえばこのサイパンの人たちが先月、青梅で開催された30kmの山岳マラソンにやってきた。30kmと聞くと日本人なら相当準備ができていなと出場しないものだ。でも、ひいき目に見ても走れそうにない太目のおばさんまでもがあっさりと出場してしまい、制限時間たっぷり使って楽しんでしまう。競技役員は大変だったと思うが、本人たちは「辛かったけど、楽しかった?!」と満足げ。うらやましいくらいに自分スタイルを貫いている。

サイパンのレースでも同じで、タガマンの数日前から少し自転車に乗り出す程度で楽しんでしまう。それも10数年前の懐かしい自転車だったり。要するに、他人やまわりの価値観ではなく、自分が楽しめるスタンスをよく心得ている。超マイペースに自身のスポーツライフを謳歌しているのだ。こちら側に立っていると、レース前に「コースはどうなっているのだ?」と青筋立てて質問している人が不思議にさえ見えてしまうのも無理はないだろう。いつからトライアスロンはそんな難しいものになってしまったのか? 3種目自分なりに遊べばいいだけ。もっと言うなれば、別に「トライアスロン」なんて決め付ける必要もない。MTBでもトレイルランでもカヤックでも、チャンスがあれば楽しめばいいと思うのだ。「これだけしかやらない」とか、「これはできない」なんて決める必要などまるでなし! もっと気楽に柔軟に楽しみたいもの。そう、サイパンの人々のように……。 さて、冒頭の小学生。きっと「10年しか生きていないからこそ言えるのだ」と思った方も多いのではないだろうか。しかし、彼こと田中耕一氏は、この姿勢を変えることなく貫き、研究者となり、のちにノーベル賞を受賞することになる。